TPP・改革・規制緩和
選挙雑感

 政策などそっちのけの離合集散を繰り返す政党・政治屋を見て、心ある人達は今回の選挙を就活選挙と皮肉った。助け舟と週刊誌に書かれた日本維新の会はTPP参加に積極的な政党である。そこに保守派と誤解されていた太陽の党が合流というより吸収合併にしか見えない形で合流した。つまり、太陽の党の爺様達は自らの議席確保の為ならTPPに参加するも又良し、と判断したのである。壊国協定たるTPPに参加するなど、如何なる事があっても真の保守では到底出来ない判断だ。やはり就活選挙といれてもしょうがない。
 そして、彼等は壊国協定たるTPP交渉に参加すると明言している。交渉に参加しながらやっぱり都合が悪いからTPPへの参加は辞めるなどとは現実には通用しない。交渉に参加している9ヶ国は全て関税の撤廃で合意しており、後からの参加国であるメキシコ・カナダは無条件に既に合意している条文を受け入れる事になっている。日本だけが別枠扱いになる事はあり得ない。
 TPP参加のデメリットは具体的に説明され、壊国が必然である事は明白にされてきている。最も、交渉過程や条件その他一切を秘密にし、国民はじめ政府や議会に対しても関係者以外には秘密とする事が義務付けられている以上は全てのデメリットが明白にされたとは考えにくいが、秘密にせねばならないほど性質の悪い協定である証でもある。対して、TPP参加推進派の言は嘘や誘導、騙し誤魔化しだらけであり、メリットに関しても全く具体性とビジョンに欠けている。あるのは、甘さと勉強不足からくる誤解、そして一部の者の欲得だけである。
 一切を秘密交渉にせねばならない事がTPPの全てを物語っているのだ。

 TPPは究極の規制緩和でもある。我國にとっては日米構造協議の集大成?と言っても過言ではないと思う。最も構造協議などと言われてはいるが実態はただの恫喝であるのだが・・・
 この協議の要求項目の中に、大店法の廃止があった。米国の恫喝に屈した政府は大店法を廃止した。結果どうなったか?イオンなどの大資本による郊外型大規模商業施設が次々とオープンし、地域に根ざした商店街がシャッター通りとなり、ついで地場系の小規模スーパーが潰れていった。それに伴い弱者と呼ばれる人達が買い物をする場所と地域コミュニティーの場が奪われ、買い物難民なる造語が出来た。
 人と人が支えあう社会の崩壊の一例である。
 その他には規制緩和による競争が原因となって多くの死者も出ている。その一例が名神や関越道の長距離バスの事故であり、トラックの死亡事故などを含めると相当数に上るとも言われている。規制緩和による競争の激化は仕事の激化に繋がり過労死を増やし賃金の低下を呼んだ。デフレスパイラルの要因であり、これがリストラを呼び失業者の増加、不況の加速、エンドレス・・・。
 少なくとも規制緩和によって良くなった事は何一つなく、一旦緩和した規制を再度別の形で規制するといった事もすでに行われている。
 又、最近は東電の問題が浮上してきた結果、電力の自由化の目玉として発送分離が電力システム改革専門委員会(委員長・伊藤元重東大教授)といった由々しき御用委員による御用委員会によって推進の道筋がつけられようとしている。勿論、電力の自由化・発送分離が日米構造協議によって日本のエネルギー産業を米国が喰い散らかし易いようにする為の要求項目であった事は知られた事実であり、国内の政治屋にとっては東電の平岩外四会長が自民党への政治献金を中止した事に対する報復(佐藤信二通産大臣当時 だったと思う)として使われた実績もある。つまり日本の政治屋にとっては党利党略の具でもある。
 安定した電気の供給と早急な復旧・保全体制は全ての国民の利益である。如何なる理由があろうともインフラを外資に渡したり大規模停電を誘発させ、復旧・保全体制をガタガタにしてしまう発送分離は絶対に阻止しなければならない。
 又、TPP推進派と同様に発送分離推進派も事実の隠蔽、誤魔化しや嘘が多い。技術的(ハード面)な部分と運用(ソフト面)部分は一体不可分であり、両者が車輪の両輪としてバランスよく回転してこそ始めて安定した電力の供給が出来るのである。しかし、委員会は意図的にハード面とソフト面を分離し技術的問題は無しと報告している。これは典型的誤魔化しである。この他にも発送分離で電気代は下がると言われているが、全くの嘘である。発送分離大国の米国ではカリフォルニアの電力危機以降、電力の自由化法を成立させた州は存在しない上に同危機以来、すでに自由化した州でも料金の大幅な値上がりに直面し、自由化を再考する州も出てきている。徹底的な構造分離をしたイギリスやイタリアは、構造分離に慎重だったフランスなどに比べると料金の値上げが著しく、電気料金の低下が期待されている。競争の中で一時的に料金が下がっても直ぐに上がる事はどのような産業でも似たり寄ったりである。スカイマークが就航した時、JAL、JAS、ANAは一斉に値下げしスカイマーク潰しを図り、同社が該当路線から撤退した途端に値上げしたという実例なんかは非常に分かり易いと思う。競争は値下圧力があると同様に値上圧力もあるという事を忘れてはいけない。そして、このようなくだらない競争は人件費に跳ね返り、失業率に跳ね返ってくる。そして、大規模停電と復旧の遅延による被害が料金の値下以上に個々人の財布に跳ね返ってくる事を充分に知っておく必要がある。御用委員や壊國主義者の嘘・誤魔化しに騙されてはいけない。
 インドや米国、韓国などの実績を見てもわかる通り発送分離は大規模停電(計画停電含)の原因であり、事故の際の復旧の遅延、インフラの不安定化や外国勢力の参入によるデメリットは限りなく大きい
 又、この他にも農協の解体などといった事を推進するキチガイ供がいる。
 確かに農協に問題が無いとは言えないが、だからといって解体などとはとんでもない話であり、新自由主義者や壊國主義者の妄言屁理屈である。山間などの集落で利益度外視で人々の生活を支え、農業を守る為に必要な営農部門の赤字を信用共済の黒字で穴埋めし継続させている。総合的な運営が必要な農協を解体すれば農業の衰退に直結し、集落の生活を崩壊させる。強欲で利己主義な銀行屋や保険屋などと新自由主義者や壊國主義者が連携した農協解体論には一分の理も無い。いや、逆に現体制の農協の社会的必要性は銀行屋や保険屋などとは比べ物にならない。銀行屋や保険屋を犠牲にしてでも農協は守らねばならない存在なのである。
 この他にも様々な壊國策謀が改革だとか規制緩和という名のもと行われ推進されているが、歴史・伝統・文化に裏付けられていない改革・規制緩和は百害あって一理無しだ。社会とは数字以上に大切なもので成り立っているのであって、数字万能主義者は社会にとっては害悪そのものである。

 我國は共生・互助、助け合いの國である。行き過ぎた規制緩和・自由化、競争社会は日本には必要ない。
 
「人」という字は互いに支えあって成っている。人は一人では生きていけない、支えあい助け合いながら生きていくから互いに支えあった字になっているのだ。と、よく言われる。欧米やハングルのように字に意味が無い記号文字と違い、漢字は字そのものに意味がある。そして、互いに支えあう「人」という字はその意味をよく表している。利益を貪り喰らい合い、潰し合い自らの利益だけを追求するTPP体制や、新自由主義のもと米国だけの利益を追求する日米構造協議、その要求を受け入れるだけの言いなり規制緩和。ここには「人」という字の意味は全く無くなっている。
 六道とは人道・天道・阿修羅道・畜生道・地獄道・餓鬼道と云われているが、TPPと言いなり規制緩和の世界は「人」という字の意味から最も外れた世界、人道を餓鬼道にする世界である事を肝に銘じてほしい。
 今回の選挙は、まさに人道か餓鬼道かの選択を迫られる選挙である。

平成二十四年十二月十日
雨宮 輝行 記