右翼、民族派と言いますが・・・ 兵庫県本部 村上学 「右翼」とは、フランス革命前のブルボン王朝において、「王に従う者は右側に並べ、王に従わざる者は左側に並べ」と言った所から始まっていることは誰でも知っている事でしょう。つまり「右翼」とは、王朝の体制を擁護する柔順な家来たちの事なのであり、言い換えれば「体制(大政ではない)の翼賛者」である政府保守派を指すものでしょう。現在の「我が國の右翼」とは、果たしてそのような思想の元に生まれ、また生き続けているのでしょうか。 「民族派」とは何でしょう。民族の定義とは、「共通の言語および慣習を持ち、血族的にも同一性を持ち、文化的・歴史的にも同一性を持つ人々の集団」と考えられていますが、我が國の場合は、この問題の最重要点である「いつの時点で、どれほどの許容性を持って民族のアイデンティーを認めるか」については語られません。あたかもそれがタブーであるように、民族を「単なる右翼の言い換え」に使っているようです。それは何故でしょう、何か都合があるのに違いありません。 我が国では、明治以降を近代と呼びますが、その明治元年を見ても「蝦夷と琉球は異民族」と考えられていました。第一、日本に併合されて150年ほどしか経過していないのです。数年前まで我が國には、「北海道旧土人保護法」という法律が生きていたのです。同じ民族と認めていれば、まさか「旧土人」とは呼ばないでしょう。 北海道には江戸時代から、松前と函館に幕府の出先があったし、沖縄には、鎮西八郎源為朝の血筋が流れている琉球王朝を餅合するのは当然との雰囲気がありました。古く大和朝廷の時代に見れば、北梅道も沖縄も「大和にまつろわぬ民」つまり異なる民族であることが明言されています。 近代になってから、いや中世の頃から、韓国人・朝鮮人などの半島民族が我が國に帰化することは頻繁にありました。戦後の現代になってからは、この流れは一層激しくなって来ます。「さかのぼれば異なる民族」の日本人です。これは決して悪いことではありませんし、恥ずかしいことでもありません。正史によっても、天皇家に百済や新羅の血が混じっていることは明らかにされています。「血が続いていること」と「血が混じっていること」は全く別の問題です。 民族を文化の単位にするなら、今の日本には数十の民族が存在することにもなります。あるいは歴史的・宗教的に大別するなら、ユダヤのように自らを神に選ばれた民族と考えている「神選民族」、支那のように天に選ばれた王が民を統治し領土と民族のアイデンティティーを保障する「東洋王道民族」、キリスト教以後のヨーロッパ白人社会が成吉思汗に脅えながら西へ南へ拡大した「西洋白人覇道民族」、エジプトやエチオピアのような王朝のなかったアフリカでは部族ごとの「ベドウイン民族」、ヒンズーの教えによってカーストごとに異なる民族だとする「インド階級民族」などなど「民族派」とは何かが分からなくなります。 我が国の「民族派」は、果たして民族をどのように考えて「民族派」を名乗るのでしょう。造化の三神の子孫である天照大神の子孫(神の時代には血筋、血族というものは存在しない)が天下り、最初から日本の土地にいた神々たちとの婚姻を繰り返し(天下りの後は血で結ばれる)、そして日向三代を経て大和に朝廷を打ち立てた神武天皇。その天皇を「本家」とする民族が、一般的に日本人と呼ばれている「天孫血族民族」。「民族派」が言う民族とは、この意味かもしれないが定かでない。 すると、「右翼」と言うも「民族派」と言うも、こうやって考えれば決して一つの枠で捕らえられるものではないと思うが、一つの考え方にしなければならないものなのでしょうか。はなはだ擬問です。 「右翼」「民族派」を名乗るのに、資格・条件・免許・許認可・登録などは一切必要ありません。つまり、「言った者勝ち」と言うことです。それを「似非」と批判することも又、各々の持つ根拠が違うのですから自由です。 「右翼」「民族派」とは、「かくあるべきだ」「かくあってほしい」というのは単なる願望であり夢想であると言えるのではないでしょうか。また逆に、「右翼」「民族派」を主張する者に対して、「似非、偽物」と批判することにも根拠さえ明確であれば正当、正論と言えるのではないでしょうか。 「俺は右翼だ」「俺は民族派だ」と言うことも、「奴は右翼じゃない」「奴は民族派じゃない」と言うことも、突き詰めて考えれば何の意味もないことかもしれません。それなのに何故、単なる呼称だけの無駄なことに拘るのでしょう。恐らく、その程度のことで悩むのは、本人が独自の根拠に慣らした上で「俺は右翼になりたい」「俺は民族派になりたい」と、ノイローゼ的な脅迫観念によって自分をぐるぐる巻にしているのが本当の所ではないのでしょうか。 「右翼」「民族派」というのが、一つの業界だと開き直れば、寛大な受け止め方で同業者と考えれば、今後は無駄な、非生産的な悩みはなくなると思いますが、あなたはどのように思いますか? |