上 海 紀 行 上海市の北朝鮮直営レストラン 上海には200年前からの上海人は、全人口の1割以下しかいないと言われており、約1,900万人の人口の大半が、城市と呼ばれる都心に住んでいる。 西洋の窓口として開かれ、各国の租界ができたり高層ビルが建てられたりした夢の町・上海には、成功を夢見て中国各地から人々がやってくる。成功した者は上海に家族や親類を呼び寄せて拠点とする。失敗した者は体一つで田舎に逃げて帰る。そうしながら上海は、人口を増やし続けている。 上海市内にはスラムが多数あったが、万博を控えてスラムは高層住宅街に変貌した。強権発動しなくとも「1家族に1部屋やる」と上海市政府が言えば、スラムの住人はアッと言う間に立退く。 また市内には、中国人から差別されている「朝鮮族(延辺出身者)」や「韓国人」の居住地区がいくつかある。通称「朝鮮村」である。 上海はそこかしこに「朝鮮レストラン」「韓国クラブ」は存在するが、北朝鮮政府が直営しているレストランは「上海高麗飯店」だけだと言われている。 本店に行ってみた、午前11時から開店していると聞いたので11時に行った。入り口にピンクのチョゴリを着た美人が二人、まるで筆者が来るのを待っていたかのようにガラスドアを開けてくれる。階段を上がれば、円卓が約20もあり、レースのカーテンで仕切ったテーブルも4つある。揃いのチョゴリの接待係は7〜8人、裏方も女性だが、こちらの方は赤いTシャツで太い首と二の腕が格闘技の上級者を思わせる。 接待係は全員、チョゴリもサンダルもアクセサリーも揃いである。その上に髪の長さまで一緒である。爪は手足ともに短く切り揃えて透明マニキュアを塗っている。カラオケを歌っても、本格的な声楽訓練を受けたことが素人でもはっきり分かる。楽器演奏もできるそうだ。やはり平壌で正式の「喜び組」としての訓練を受けた連中はレベルが違う。 出てくる料理は、在日朝鮮人の結婚式や正月に出されるような特別料理ばかりである。キムチも切り揃えられている・・・と言えば、他の料理の説明は不要だろう。 店内には北朝鮮国旗が飾られている。その上に、店のロゴが「千里馬将軍」である。一晩に千里を走る馬に乗った将軍が朝鮮を平定した神話に始まる「千里馬将軍」こそ、金日成がシンボルマークとしていたものである。金正日も後継者と決まった前後、白い馬に乗って人々の前を駆け抜けていたが、これこそ金日成の後継者、つまり「千里馬将軍」の後継者という意味である。国家主席や国防委員長という役職に大した意味はなく、「千里馬将軍」の後継者にこそ意味がある。三代目に金正雲が就任するのかどうか知らないが、人々の前を白い馬に乗って走り回る息子が後継者になることは間違いないだろう。 それほど重要な意味を持つ「千里馬将軍」のロゴを店に使っているということは、トップの承認をもらっている政府部署が直営しているということに疑いはない。それが9号室なのか統一戦線部なのか知らないが、この店が正式なものである証明だろう。 上海の統一戦線部や安全部の許可を得ているそうだが、「外貨獲得」と「被差別朝鮮族と韓国人の情報交換の場」として機能しているらしい。「日本人も店にきますよ」と言っていたが、よく聞けば「在日韓国人」のことだった。 接待係は、料理の取り分けやお酌もする。女性達は相互監視だが政治的な話題以外の話相手にもなってくれるし一緒にカラオケも歌ってくれる。 朝鮮語と中国語しか通じないが、この店は「異国の中の異国」である。
![]() 北朝鮮当局者様 拠点・・・もとい、お店の宣伝料を夜・露・死・苦♪ |