クリミヤ会議の議事に関する議定書中の日本国に関する協定     ポツダム宣言(付カイロ宣言)    英米共同宣言(大西洋憲章)







クリミヤ会議の議事に関する議定書中の日本国に関する協定(ヤルタ協定)一九四五年二月一一日署名
 
三大国、すなわちソヴィエト連邦、アメリカ合衆国及び英国の指導者は、ドイツ国が降伏し且つヨーロッパにおける戦争が終結した後二箇月又は三箇月を経て、ソヴィエト連邦が、次の条件で連合国側において日本国に対する戦争に参加することを協定した。

一 外蒙古(蒙古人民共和国)の現状は維持する。

二 千九百四年の日本国の背信的攻撃により侵害されたロシア国の旧権利は、次のように回復される。
  (イ) 樺太の南部及びこれに隣接するすべての島を、ソヴィエト連邦に返還する。
  (ロ) 大連商港を国際化し、この港におけるソヴィエト連邦の優先的利益を擁護し、また、ソヴィエト社会主義共和国連邦の海軍基地としての旅順口の租借権を回復する
      。
  (ハ) 東清鉄道及び大連に出口を提供する南満洲鉄道は、中ソ合弁会社を設立して共同に運営する。但し、ソヴィエト連邦の優先的利益は保障し、また、中華民国は、 
      満洲における完全な主権を保有するものとする。

三 千島列島は、ソヴィエト連邦に引渡す。 

前記の外蒙古並びに港湾及び鉄道に関する協定は、蒋介石総統の同意を要する。大統領は、スターリン元帥からの通知により、この同意を得るために措置を執る。 
三大国の首班は、ソヴィエト連邦のこれらの要求が日本国の敗北した後に確実に満足されることを合意した。 
ソヴィエト連邦は、中華民国を日本国の束縛から解放する目的で、自国の軍隊によりこれに援助を与えるため、ソヴィエト社会主義共和国連邦と中華民国との間の友好同盟条約を中華民国国民政府と締結する用意があることを表明する。





ポツダム宣言(付 カイロ宣言)(一九四五七月二六日署名、同年八月一四日日本国受諾)

一 吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及グレート・ブリテン国総理大臣は、吾等の数億の国民を代表し、協議の上、日本国に対し、今次の戦争を終結するの機会を与 
   ふることに意見一致せり。

二 合衆国、英帝国及中華民国の巨大なる陸、海、空軍は、西方より自国の陸軍及空軍に依る数倍の増強を受け、日本国に対し最後的打撃を加ふるの態勢を整へたり。 
   右軍事力は、日本国が抵抗を終止するに至る迄同国に対し戦争を遂行するの一切の聯合国の決意に依り支持せられ、且鼓舞せられ居るものなり。

三 蹶起せる世界の自由なる人民の力に対するドイツ国の無益且無意義なる抵抗の結果は、日本国国民に対する先例を極めて明白に示すものなり。現在日本国に対し集 
  結しつつある力は、抵抗するナチスに対し適用せられたる場合に於て全ドイツ国人民の土地、産業及生活様式を必然的に荒廃に帰せしめたる力に比し、測り知れざる程 
  更に強大なるものなり。吾等の決意に支持せらるる吾等の軍事力の最高度の使用は、日本国軍隊の不可避且完全なる破壊を意味すべく、又同様必然的に日本国本土 
  の完全なる破壊を意味すべし。

四 無分別なる打算に依り日本帝国を滅亡の淵に陥れたる我儘なる軍国主義的助言者に依り日本国が引続き統御せらるべきか、又は理性の経路を日本国が履むべきか 
   を日本国が決定すべき時期は、到来せり。

五 吾等の条件は、左の如し。 
   吾等は右条件より離脱することなかるべし。右に代る条件存在せず。吾等は、遅延を認むるを得ず。

六 吾等は、無責任なる軍国主義が世界より駆逐せらるるに至る迄は、平和、安全及正義の新秩序が生じ得ざることを主張するものなるを以て、日本国国民を欺瞞し、之を 
   して世界征服の挙に出づるの過誤を犯さしめたる者の権力及勢力は、永久に除去せられざるべからず。

七 右の如き新秩序が建設せられ、且日本国の戦争遂行能力が破砕せられたることの確証あるに至る迄は、聯合国の指定すべき日本国領域内の諸地点は、吾等の茲に 
   指示する基本的目的の達成を確保する為占領せらるべし。

八 カイロ宣言の条項は、履行せらるべく、又日本国の主権は、本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定する諸小島に局限せらるべし。

九 日本国軍隊は、完全に武装を解除せられたる後、各自の家庭に復帰し、平和的且生産的の生活を営むの機会を得しめられるべし。

一〇 吾等は、日本人を民族として奴隷化せんとし、又は国民として滅亡せしめんとするの意図を有するものに非ざるも、吾等の俘虜を虐待せる者を含む一切の戦争犯罪人
    に対しては、厳重なる処罰を加へらるべし。日本国政府は、日本国国民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障礙を除去すべし。言論、宗教及 
    思想の自由並に基本的人権の尊重は、確立せらるべし。

一一 日本国は、其の経済を支持し、且公正なる実物賠償の取立を可能ならしむるが如き産業を維持することを許さるべし。但し、日本国をして戦争の為再軍備を為すことを
    得しむるが如き産業は、此の限りに在らず。右目的の為、原料の入手(其の支配とは之を区別す)を許可さるべし。日本国は、将来世界貿易関係への参加を許さるべ
    し。

一二 前記諸目的が達成せられ、且日本国国民の自由に表明せる意思に従ひ平和的傾向を有し且責任ある政府が樹立せらるるに於ては、聯合国の占領軍は、直に日本 
    国より撤収せらるべし。

一三 吾等は、日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し、且右行動に於ける同政府の誠意に付、適当且充分なる保障を提供せんことを同政府に対し要求す
    。右以外の日本国の選択は、迅速且完全なる壊滅あるのみとす。

(参考)
カイロ宣言(米英中共同声明、一九四三年一一月二七日署名) 

各軍事使節は、日本国に対する将来の軍事行動を協定した。 

三大同盟国は、海路、陸路及び空路によつて野蛮な敵国に仮借のない圧力を加える決意を表明した。この圧力は、既に増大しつつある。 

三大同盟国は、日本国の侵略を制止し罰するため、今次の戦争を行つている。 

同盟国は、自国のためには利得も求めず、また、領土拡張の念も有しない。 

同盟国の目的は、千九百十四年の第一次世界戦争の開始以後に日本国が奪取し又は占領した太平洋におけるすべての島を日本国から剥奪すること、並びに満洲、台湾及び澎湖島のような日本国が清国人から盗取したすべての地域を中華民国に返還することにある。 

日本国は、また、暴力及び強慾により日本国が略取した他のすべての地域から駆逐される。 

前記の三大国は、朝鮮の人民の奴隷状態に留意し、やがて朝鮮を自由独立のものにする決意を有する。 

以上の目的で、三同盟国は、同盟諸国中の日本国と交戦中の諸国と協議し、日本国の無条件降伏をもたらすのに必要な重大で長期間の行動を続行する。





英米共同宣言(大西洋憲章)一九四一年八月一四日発表  

千九百四十一年八月十四日に連合王国総理大臣及びアメリカ合衆国大統領が発表した大西洋憲章として知られる原則宣言 

アメリカ合衆国大統領及び連合王国における皇帝陛下の政府を代表するチャーチル総理大臣は、会合を行なつた後、両者が、世界の一層よい将来に対するその希望の基礎とする各自の国の国政上のある種の共通原則を公にすることは正しいことであると認める。
 
第一に、両者の国は、領土的たるとその他たるとを問わず、いかなる拡大も求めない。 

第二に、両者は、関係国民の自由に表明する希望と一致しない領土的変更の行われることを欲しない。 

第三に、両者は、すべての国民に対して、彼等がその下で生活する政体を選択する権利を尊重する。両者は、主権及び自治を強奪された者にそれらが回復されることを希望する。 

第四に、両者は、その現に存する義務に対して正当な尊重を払いつつ、大国たると小国たるとを問わず、また、戦勝国たると敗戦国たるとを問わず、すべての国に対して、その経済的繁栄に必要な世界の通商及び原料の均等な解放がなされるよう努力する。 

第五に、両者は、改善された労働条件、経済的進歩及び社会保障をすべての者に確保するため、すべての国の間の、経済的分野における完全な協力をつくりだすことを希望する。 

第六に、ナチ暴政の最終的破壊の後、両者は、すべての国民に対して、各自の国境内において安全に居住することを可能とし、かつ、すべての国のすべての人類が恐怖及び欠乏から解放されてその生命を全うすることを保障するような平和が確立されることを希望する。 

第七に、このような平和は、すべての人類が妨害を受けることなく海洋を航行することを可能ならしめるものでなければならない。 

第八に、両者は、世界のすべての国民が、実際的および精神的のいずれの見地からみても、武力の使用の放棄に到達しなければならないと信ずる。陸、海又は空の軍備が、自国の国境外における侵略の脅威を与え又は与えることのある国々において引続き使用される限り、いかなる将来の平和も維持され得ないのであるから、両者は、一層広範かつ恒久的な一般的安全保障制度が確立されるまでは、このような国々の武装解除は欠くことのできないものであると信ずる。両者は、また、平和を愛好する国民のために、恐るべき軍備の負担を軽減する他のすべての実行可能な措置を援助し、かつ、助長する。


フランクリン・D・ルーズベルト
ウィンストン・S・チャーチル